HIV感染症/エイズ

HIV感染症/エイズの概要

エイズ(AIDS)とは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染によって引き起こされ、重篤な免疫不全状態により生じた日和見合併症の状態をいいます。現在でも治療が難しく深刻な問題とされ、世界中で7,000万人以上が感染し3,000万人以上が命を失っています。HIVは細胞膜の表面にあるCD4というタンパク質を介して細胞内に感染する性質があり、免疫を担当する細胞に感染し破壊していきます。そのため、細胞の機能が低下し全身性の免疫不全状態に陥るわけです。

感染経路には、性行為、血液(輸血)、母子感染があります。感染者の血液を吸った蚊、手を触れる、身体に触れるなど日常的な接触では感染しません。セックス、アナルセックス、オーラルセックスの時に傷口があると、そこから精液や膣分泌液内に存在するウイルスが侵入し感染します。オーラルセックスでの感染は少ないといわれていますが、口腔内に傷がある場合には感染する可能性があります。


HIV感染症/エイズの症状

エイズの症状HIV感染の症状(経過)は、感染初期無症候期〜中期エイズ発症期の3期に分類されます。

感染初期(感染後2〜4週間)

感染後2〜3週でウイルス量は最大となり、この時期は発熱、咽頭の痛み、倦怠感、筋肉痛、皮疹といったインフルエンザ様症状を呈することがあります。症状は数週間続き自然に消失することもありますが、個人差により自覚症状のないまま無症候期に入ってしまう場合もあります。

無症候期〜中期(感染後約5〜10年)

感染後6〜8週で抗体が産生されてくると、ウイルス量は6〜8ヵ月後にある一定の量まで減少します。見かけ上、休眠状態になるわけです。この時期に治療を行わないで放置すると、再びウイルスが増殖し免疫力の低下をきたします。その後、数年間続いた無症候期が過ぎ、中期に入ると再び発熱、倦怠感などの症状が出現してきます。

エイズ発症期

適切な治療が行われないと、HIV感染は進行し増殖を抑えられなくなります。その結果、免疫力の低下がさらに進み、健常人では問題とならない日和見感染によってエイズを発症してしまいます。この時、食欲不振、下痢、寝汗、体重減少による衰弱、低栄養状態に陥ります。


HIV感染症/エイズの治療と治療薬

治療目標は、血液中のウイルス量をある一定量以下に抑え続けることであり、そのため強力な多剤併用療法(HAART)を行います。HIVは高度な変異能力を持っているため、ウイルスの増殖を十分に抑えないと耐性ウイルスが出現するだけでなく、次回からの治療が遂行されにくくなります。

多剤併用療法(HAART)は、核酸系逆転写酵素阻害剤(NRTI)、非核酸系逆転写酵素阻害剤(NNRTI)、プロテアーゼ阻害剤(PI)の3剤を組み合わせた治療です。今までは、NRTI 2剤を先に決めてからPIかNNRTIを決めると言う考え方が主流でしたが、最近は薬理効果の高いPIとNNRTIをメインとする組み合わせに変わってきました。


核酸系逆転写酵素阻害剤(NRTI)

細胞内のリン酸化酵素で、最終的に三リン酸化物となり、天然基材であるデオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP)と競合的にHIV逆転写酵素(RT)活性を阻害します。細胞の活性度(状態)により抗ウイルス効果が異なり、レトロビル(AZT)、ゼリット(d4T)は盛んに分裂している細胞で、より強い効果を発揮し、エピビル(3TC)、ヴァイデックス(ddI)などは静止期の細胞で、より強い効果を示すとされています。

レトロビル(ジドブジン:AZT)、ヴァイデックス(ジダノシン:ddI)、エピビル(ラミブジン:3TC)、ゼリット(サニルブジン:d4T)、コンビビル(ジドブジン+ラミブジン:AZT+3TC)、ザイアジェン(アバカビル:ABC)、ビリアード(テノホビル:TDF)、エプジコム(アバカビル+ラミブジン:ABC+3TC)、エムトリバ(エムトリシタビン:FTC)

非核酸系逆転写酵素阻害剤(NNRTI)

化学構造上、NRTIと大きく異なり細胞内で代謝を受けません。HIV-1のHIV逆転写酵素(RT)活性をデオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP)と非競合的、特異的に阻害します。優れた抗HIV効果を示す反面、NRTIに比べ耐性を誘導しやすい点と、HIV-1以外のHIV-2などには無効という点があります。

ビラミューン(ネビラピン:NVP)、ストックリン(エファビレンツ:EFV)、レスクリプター(デラビルジン:DLV)

プロテアーゼ阻害剤(PI)

優れた抗HIV効果から、1995年以降、続々と開発され、現在の抗HIV療法の軸となっています。問題点として、服用の困難性(摂食の必要性、服用時間の厳守、大量の水分補給、大型の剤型、多量の錠数など)や副作用の発現頻度があげられます。

クリキシバン(インジナビル:IDV)、インビラーゼ(サキナビル:SQV-HGC)、ビラセプト(ネルフィナビル:NFV)、ノービア(リトナビル:RTV)、カレトラ(ロピナビル+リトナビル:LPV+RTV)、レクシヴァ(ホスアンプレナビル:FPV)


以上、現在国内で使用できる薬剤を列挙しましたが、前述したとおりNNRTIではストックリン、PIではカレトラを主軸とする治療になってきました。以下に初回治療として推奨される多剤併用療法の組み合わせを示します。

  • ストックリン+エピビル+レトロビル
  • ストックリン+エピビル+ビリアード
  • ストックリン+エムトリバ+レトロビル
  • ストックリン+エムトリバ+ビリアード
  • カレトラ+エピビル+レトロビル
  • カレトラ+エムトリバ+レトロビル

現代医学ではHIVを体内から完全に排除することはできません。しかし、多剤併用療法(HAART)でエイズ発症を遅らせ、健常人と同じような生活や社会復帰が可能になっています。ただ、この治療法は上述したように、ウイルスの増殖を抑え続けなければなりません。

つまり、しっかり服用されていないと効果がなくなるだけでなく、薬剤耐性ウイルスの出現の機会を与え、有効な薬剤を失うことになります。そのため、この治療法では服薬遵守の良否が治療の成果を左右することになります。


HIV感染症/エイズの検査と予防法

コンドームの使用は、性交時のほんのわずかな出血から感染を防ぐため、基本中の基本になります。また、感染率の高いアナルセックスを避けることや、感染率は低いとされているオーラルセックスの時にもコンドームを使用するべきです。

もし前述の「HIV感染症/エイズの症状」に該当する症状があれば、検査キットによる早期発見をおすすめします。検査は感染後2〜3ヵ月から使用可能ですが、血液中に抗体ができるまでの約6〜8週間は偽陰性になることがあります。この期間は正確な結果が出ないだけでなく、大切なパートナーに感染させてしまう可能性もあるので十分に注意しましょう。

もしかして?心配なまま放っておくのは一番良くありません。まず検査可能な時期になったら、自宅で簡単、匿名でできる性病検査 STD チェッカーで安心を買いましょう。結果はセキュリティサイトで確認、プライバシー対策も万全です。大切なパートナーに感染させないためにも早期発見を心がけましょう。

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現在、若年層を中心に流行しているクラミジア感染症など、他の性感染症に罹患しているとHIV感染率は3〜5倍に上昇します。日頃からその他の性感染症に罹らないように心がけましょう。また、献血時の検査で完全にウイルスを排除することは困難なため、献血者のモラルに頼るしかありません。検査目的の献血は絶対やめましょう。 >>血液製剤の安全性

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