性器ヘルペス

性器ヘルペスの概要

性器ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス(HSV)の感染によって、性器またはその周囲に水泡や潰瘍を発症します。この単純ヘルペスウイルスは1型と2型に分類され、1型は主に口内炎、口唇ヘルペス、ヘルペス性角膜炎の原因となり上半身(まれに性器)に感染します。一方、2型は性器など下半身のみに感染するといわれ、性器ヘルペスは主に2型が原因となります。

性器周辺に感染した単純ヘルペスウイルスは、知覚神経を上って腰仙随神経節で潜伏状態に入ります。その後、感染者の免疫力低下や何らかの刺激により再活性化され、神経を下りほぼ同じ場所に発症します。性器ヘルペスは感染しても自覚症状が乏しいことと、潜伏感染と再活性化というウイルスの特性が感染症の蔓延に大きく関与しています。

単純ヘルペスウイルスの感染力は強く、あらゆる性行為により感染します。患部に直接触れる以外にも、患部に触れた手やその手が触れた物からの感染も考えられます。また、妊婦が分娩時に性器ヘルペスを発症すると、児に感染し新生児ヘルペスを発症することもあります。新生児ヘルペスの20〜30%は死に至り、予後の悪い疾患と言われています。


性器ヘルペスの症状

臨床症状により、急性型(初感染初発)、誘発型(非初感染初発)、再発型に分類されます。

急性型(単純ヘルペスウイルスの初感染により起こります)

男性は感染者との性的接触によって外陰部や口唇周囲から感染し、2〜10日間の潜伏期間を経て発症します。性器に痒みや違和感をともなった複数の水疱が出現し、1週間前後で水疱が破れ痛みのある潰瘍に変わります。また、太もも部分に痛みのあるリンパ節の腫れや尿道分泌物がみられることもあります。

女性は感染者との性的接触により感染し、2〜10日間の潜伏期間を経て突然発症します。大陰唇や小陰唇から、膣前庭部、会陰部にかけて多発性の水泡や潰瘍を発症します。この症状は外陰部だけでなく、子宮頸管や膀胱にまで及ぶことがあります。太もも部分に痛みのあるリンパ節の腫れや圧痛もみられ、強い痛みにより排尿が困難になり、ときに歩くことができなくなることもあります。

誘発型(過去に感染していた単純ヘルペスウイルスの活性化によって起こります)

急性型(初感染初発)の場合よりも症状は軽く、短期間で治癒します。しかし、免疫力の低下しだいでは重症になることもあり、女性では特定の薬剤の使用や妊娠など一時的な免疫力の低下時に発症することがあります。

再発型(潜伏していた単純ヘルペスウイルスの再活性化によって起こります)

男女ともに再発時の症状は軽く、初感染時とほぼ同じ場所または殿部や大腿部に水泡や潰瘍を発症します。大体1週間以内に治癒しますが、ときに10日以上に及ぶこともあります。再発する前に、男性では全身倦怠感、下肢の違和感など、女性では外陰部の違和感や、大腿部から下肢にかけて神経痛のような前兆があります。


性器ヘルペスの検査と予防法

最善の予防策は、単純ヘルペスウイルスを排出している感染者との性的接触を避けることです。しかし、自覚症状なしにウイルスを排出していることもあるので予防は困難を極めます。

性行時にはコンドームの使用をおすすめしますが、再発は、肛門、殿部、大腿部などにも発症しますので十分ではありません。患部が治癒していてもウイルスは神経節に潜伏しています。患部に触れないことや、日頃の手洗いの履行が予防につながります。

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