本国では、性感染症(STD)およびエイズ(AIDS)に関して、それぞれ「性病予防法」(昭和23年施行)および「後天性免疫不全症候群の予防に関する法律」(平成元年施行)に基づいて対応してきました。
しかし、平成10年10月、旧伝染病予防法(明治30年施行)の全面的改正と併せて、「感染症の予防と感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症新法)の公布により、性感染症とエイズは一般医療機関で取り扱われる疾患となったのです。
これにより性感染症とエイズは、他の多くの感染症と同じく、一般の医療機関で取り扱う4類感染症のカテゴリーに入れられ、正しい知識の普及と慎重な予防を実践すれば予防可能な疾患として認識されるようになっています。
また、平成12年に公示された「性感染症に関する特定感染症予防指針」では、性感染症は
「特別な感染症ではなく性的接触により誰もが感染する可能性がある」
「女性は男性に比較してダメージが大きい」
「生殖年齢にある男女を中心とした大きな健康問題のひとつである」
と述べられ、若年層の発生の増加が報告されていることから、これらを対象とした感染予防と早期発見、早期治療の普及啓蒙が重要であると強調されています。
この「予防指針」では、性的接触を介して感染する疾患として、性器クラミジア感染症、性器ヘルペスウイルス感染症、尖圭コンジローマ、梅毒、淋菌感染症の5疾患が選出されています。以前、性病予防法で決められていた梅毒、淋病、軟性下疳、鼡径リンパ肉芽腫の4つの性病の定義はなくなり、新たにこれら5疾患が性感染症として取り上げられました。
現在、梅毒とエイズについては全例届け出が医師に義務づけられており、淋菌感染症、性器クラミジア感染症、性器ヘルペスウイルス感染症、尖圭コンジローマの4疾患については、全国約900カ所の定点医療機関からの報告によってその動向が把握されています。